根無し草
帰るおうちがあること。
美味しいご飯が食べられること。
感情を分かち合える家族がいること。
当たり前の、当たり前の事を。
根無し草はずっと探していました。
根を張る場所を、ずっとずっと探して。
世界中を旅しました。
どこに行っても自分の居場所じゃないように感じて。
『あぁ。ようやく見つけた!』と思ったとたん、スル~っとすり抜けて行きました。
なんでだよ。
なんで僕だけ。
なんで僕だけずっとひとり。
根無し草は、アイスル事とアイサレル事を知りませんでした。
愛がなんなのかを知りませんでした。
自分が本当は根無し草じゃない事も知
りませんでした。
たくさんのお花達がどんどんきれいに咲いていき、子供のお花も生まれてお花にたくさんの人が集まっていて。
とても眩しく見えました。
僕も種を蒔いてキレイな花を咲かせたいな。
根無し草をいつも心配に見ていた白いお花さんは、いつも祈っていました。
『根無し草さんが幸せでありますように。』
『根無し草さんの咲かせる花を見てみたいな。』
青いお花さんも願っていました。
『根無し草さんが幸せでありますように。』
『根無し草さんが明るく楽しく笑えますように。』
黄色いお花さんも。
『根無し草さんにたくさんのお水と愛をたくさんあげよう。』
『根無し草さんが、たくさん愛されている事に気づきますように。』
たくさんの仲間達からたくさんの愛をもらい、元気になった根無し草さんは自分もキレイなお花を咲かせる事ができるのかもしれない。と、きぼうを持ちました。
『どこに種を植えるかは自分で決めていいんだ。』
空の遠く上の方から聞こえました。
根無し草さんは、来る日も来る日も一生懸命考えました。
そして、大好きな青いお花さんの所に種を蒔こうと決めました。
『なんで?』
青いお花さんが大好きだから。
それだけだよ。
大好きな青いお花さんの所で、キレイなお花を咲かせたいなと風に乗って飛んで行きました。
道
ずっとずっと君は僕で僕は君だった。
君が自分を生きると決め、本当に自分は何をしたいかもがき苦しんでいる時。
僕はそろそろ君とサヨナラの時間が近づいている事を知っていた。
ずっと君は僕で僕は君だった。
君の誰にも見せない涙は、僕だけが知っている。
君は君を生きる。
そう心に強く決めて。
また歩き始めたから。
僕はここでサヨナラだ。
君の選んだ道に、僕は一緒に行く事はできない。
僕の事を人は、悲しみや孤独と呼ぶ。
どうか、幸せでいてください。
愛しい君へ。
君が笑った
いつも何か大きな傷みを抱えて苦しんでいた君が心の底から笑った。
君が苦しい時は、僕も苦しい。
君が悲しい時は、僕も悲しい。
でも、君の傷みを変わってあげる事はできない。
僕はただ信じた。
君の心の重荷がいつか軽くなるようにと。
僕は祈った。
いつか君が心からの笑顔で笑えるようにと。
長い長い年月をかけて、君は自力で自分に戻ってきた。
たくさんの人の手を借りて、たくさんの人にアイスルという事を教えてもらい。
君は自分の力で自分の人生に還ってきた。
君はいつも困ったように笑っていたけれど、無理して笑う事はないんだ。
君の心からの笑顔は、僕を幸せにする。
なにかになろうとしなくていい。
特別な人間にならなくてもいい。
君が幸せで、僕は幸せ。
ただそれだけで世界は明るく照らされているから。
未来からの手紙
早く君に会いたい。
たくさん辛い事があった人生だっただろうけど、それと同じ位たくさんの人に優しく愛されて来たのを知ってる?
だから、今の君がいる。
これからは、一緒に歩いて行こう。
君の見てきた景色を丸ごと受け入れられる準備はできているよ。
早くこっちの世界においで。